わたくしには睡眠中によく来客がある。
いつかは忘れたが夜中に小さな肉の塊が足下から胸元に這って来た。
赤ン坊の幽霊ではない。
霊界から来たそうだ。
まだこの世に生を受けていない客人ということだね。
産まれたいそうだ。
仕事がしたいのだと。
デカいヤマがあるらしい。
母親にとセレクトした女は理由あって自分を堕胎させる気だと。
“俺を産んだら左団扇で暮らせると伝えてくれ。
たんまり稼ぐから。
いや、もうすでに稼がせてやったからさ。
試しに鑑定に来たら吹っ掛けてやってくれよ”
いただけるモノがあるなら、こっちはやるぜ
そう呟くと肉の塊は消えて行った。
3日後に事は動いた。
肉の塊が母親に選んだ女が私の店にやってきた。鑑定の現場にだ。
女の体軀は立派だがカネには見放されて久しそうだった。
彼女は30代の後半、すでに旦那と2人のお子さんがいらっしゃる。
椅子を勧めるのも忘れ、わたくしは切り出した。
旦那以外の若い燕との間の望まない子だろうけれども産んでやってくれ。
旦那と子どもとの血液型の違いや、若い燕が巣立つタイミングは
全部こっちで引き受ける。
彼女は私の申し出に割って入って来た。
「妊娠に気づいた時からお腹の中でこの子はもう私を蹴ってくる。
強い子だと感じました。
外堀さえしっかりしてれば産みたいと思います。
お願いすることが山積みなのですが先生・・・。」
あとは料金の算段だ。
『1本でいかがでしょうか?』
わたくしと彼女で声が揃った。
「今日ご用意してあります。先週、たまたま遺産が入りました。」
1本でいかがでしょうか?
Rav(La vie!).Hiroaki Ohori
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