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大好きを仕事にしよう

更新日:2023年9月13日

気弱そうな彫師が田舎臭いキャバ嬢とやって来た。

ウチの奴は店で№1だと紹介されたので、そいつの店にキャバ嬢は

この女1人に違いないと踏んだ。

彫師は単価の高い和彫りを専門にしていたので続かず廃業。

数少ない出入りの客から盃をもらったそうだ。

組から充てがわれた飲食店と称するキャバクラ店舗は6階建ての

ビルの最上階にある。

当然大きなJRの駅裏に位置し、地階からてっぺんまですべて

同グループ同業種のアジトだった。

控え目に言って最上階というロケーションは最悪。シノギは取れずで

週明けには気分転換に事務所で彫師の指が1本減ることになるという

追い詰められた状態だった。

彫師は呑気に自身のことを店長と呼ぶようわたくしに言った。

早速、開店前に現地を訪れると

ビルのエレベーターの中に昔刺されたまま血だるまの男が待っていて

くれたので消えてもらった。

強運で売れっ娘の雰囲気しか持たない他店のキャバ嬢

は素足で非常階段を使っていたそうだ。

元彫師の上司で豊川悦司似の若頭・・・いやエリアマネージャーが

出て来たので、馬鹿みたいだと思ったが両手にはめていた太い水晶の数珠を

持ち上げておいた。

あらかじめ聞いていた人物像とはまるで違っていて

若頭はことのほか機嫌が良かった。

冷たい物をキメていたのだろう。ザラメ砂糖が焦げたような

甘くて苦い匂いをさせていたから。

目についた生真面目そうなキャッシャーの小男は持ち逃げの

前があることを隠したままだったので暇を出した。

以上の改善で当日の夜からすぐに良い売上数字が出続けた。

後日、再び様子を見に訪れると

豊川悦司は今まで鼻にあてていたスプーンをぶん投げて迎え出てくれて

こちらがもう止めてくれと言うまでブ厚い茶封筒をわたくしの

鞄にいくつも突っ込み続けた。

帰りの際には“組の暖簾を少し引き継いでくれ”とまで

頼まれたが断った。

強面(こわもて)と揉み手のバランスが不釣り合いだったからだ。

ビルを後にすると指と首がつながったせいなのか

わたくしに対してすっかり態度がデカくなった元彫師は

昔、花屋になりたかったんだと切り出した。

厳しい花屋の修業が上手く続くよう願掛けのつもりで少し

彫ったのがはじまりだったんだと

組が手配した趣味の悪いリムジンの中で前置きの多い

背中を見せてもらったが

草木はおろか花など何処にも咲いてやしなかった。





ボクは大好きを仕事にしてます

手作りが大好き

手作りの印刷機で

手作りの紙幣を刷って

マルシェで

売ってまぁ~す。







              Rav.Hiroaki Ohori 

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